堰が切れた。

話している途中、必死に堪えた涙が後から後から溢れ出る。

“苦しまないで”というその一言は、まるで長い間俺を苦しめた呪縛から解き放ってくれたような。

そんな気がした。



「……ありがとう……」



小柄な美生を抱き締める腕に、力が入る。



ありがとう。

俺の痛みを理解しようとしてくれて。

俺なんかのために泣いてくれて。

俺のことを心の底から思いやってくれて。

何より、俺の希望になってくれて──。



「俺……美生に出会えて本当によかった」



生きていけるよ。

君がいるなら、きっと、これからも。





文化祭2日目の朝。

窓から差し込む太陽の光に、目が覚めた。



「……何時」



寝惚け眼を擦りつつ、ケータイで時間を確認する。



……まだこんな時間か。

あと1時間は寝られるな、と再び布団に潜り込む。

が、すっかり起きてしまった脳は、眠りにつくことを頑なに拒んで。