「おい、いえ……美生!」

「なあに?」

「家事全般、頼んだからな」



キッチンを指さしながら言うと、彼女はにかっと笑った。



「勿論!それが約束でしょ?掃除洗濯、何でもやるよ」



遡ること一時間、家事を全て任せるという条件で、彼女──美生の居候を許可した。

使ってない部屋はいくつもあるし、昔使ってたベッドがそのまま残っているから、寝泊りくらいは出来る。

それに、ほぼ一人暮らしの俺にとって、この家は広過ぎて。

話し相手とまではいかなくても、人の気配がある方が気が紛れるかな、なんてさ。



「千速くん」

「……何」

「ルール、絶対守るからね」



美生の滞在を許可したとき、2人でルールを決めた。



ひとつ、お互いの部屋には無断で入らないこと。

ふたつ、洗濯は各自ですること。

みっつ、料理に俺の嫌いなピーマンを入れないこと。

そして、よっつ。



「あぁ。俺も」



お互いを干渉しないこと──。



そんなルールと共に、俺達の同居生活はスタートした。