美生がいなくなった部屋で、再び原稿用紙と向き合う。



「……」



けど、どうしてもさっきの美生の姿がちらついて。



「……くそ」



なんでこんなに俺、モヤモヤしてんだよ。

他人のことなんてどうだっていい筈だろ。



「……」



さっきの勢いが嘘のように、動かなくなった手。

それは、鉛のように重くて。



「……はぁ」



机に肘をついて、髪をくしゃっと掴む。



美生には言わない……と言うより、言えない、今の俺の心の中。

本当はまだ迷ってる。