俺が真剣な面持ちで言うと、美生は儚げに笑った。



「私はただの“家出娘”だから。悪いなんて思わなくていいんだよ」



突き放された気がした。

歩み寄ろうとしたら、線を引かれた。

それが何故だかすごくムカついて、“今のお前の家はここだろ”、そう言おうとしたけど、慌てて口を噤んだ。



「……そっか」



言う資格なんて俺にはないから。



俺は、美生のことを殆ど知らない。

どうして家を飛び出してきたのかとか、どこの学校に通っているのかとか。

そんな彼女に、俺が勝手なことを言える筈もなかった。





「私、そろそろ寝るね。千速くんはまだするの?」

「……あぁ。ここまでやっちまったし、どうせならもう終わらせる」

「そっか、無理し過ぎないでね」

「……おう。おやすみ」

「おやすみ」



僅かな微笑みを残し、美生は部屋へと向かっていった。