カリカリとシャーペンが紙の上を滑る音と、風呂場の方から聞こえる水の音だけが俺の耳を通り抜ける。



「……」



反省の言葉を必死に搾り出す。



つらつらこんな堅苦しい文が10枚分並んでると、読む方も疲れるじゃねえかよ。



なんて、内心毒づきながら、ひたすら手を動かす。

シャーペンの芯が折れ、消しゴムが千切れても……それでも、手を止めることはなかった。



一生懸命になって、意識を集中させて……余計なことを考えないようにしていたのかもしれない。

俺の道を塞ぐ忌まわしい過去の記憶を、絶対に思い出さぬように、と。





美生がパジャマ姿になって戻ってきたのと同時に、漸くペンを置いた。



「美生、もう寝る?俺、紅茶淹れるけど」

「まだ寝ないけど、私やるよ?千速くんは座ってて」

「いいよ、ついでだし。気分転換したいから」