「ち、違うの桜井君……!私が、勝手に泣いただけで……」

「いやいや、千速が原因やろ!コイツ冷たいもんなぁ、わかるでー」

「てめ……好き勝手言いやがって」

「んー?ごめんなぁ、聞こえへん」

「……」



周りの目線を感じながらも、俺達は作業を進めていった。



どこにでもある、高校生の日常。

当たり前にあるその時間も、俺にはないと思ってた。



だけど、背中を押されて一歩前に踏み出したら、見える世界が変わったんだ。

モノクロだった世界が、色付いて。



「千速、帰ろ!」

「……嫌」

「なんでやねん!」





帰ったら真っ先に伝えよう。

おばあさん直伝の料理を作って、俺の帰りを待ってくれている美生に。



そしたら君は、なんて言ってくれるかな──。