予想外の言葉に困惑しつつ、情けない面持ちであろう顔を上げた。

そんな俺を横目に見た美生は、目尻を下げて笑う。



「確かに私は──千速くんの傍にずっといられるわけじゃない。いつか、自分がいるべき場所に帰らなきゃいけないときが来てしまう」

「……」

「だから、千速くんがあんな風に言ってしまうのは仕方ないことだと思うの」

「そんなこと──!」

「でも信じてほしい。あの言葉は嘘じゃないって」



真っ直ぐに俺を見据える、茶色がかった美生の瞳。

その奥に映る俺は、弱さの他に何かを持っているのだろうか。



「誰かにおかえりって言うこと、誰かとご飯を一緒に食べること……そんな当たり前のことが、私にとっては当たり前じゃなかった」

「……」

「寂しさでいっぱいだった心を、千速くんが埋めてくれたの」



知らなかった。

美生の笑顔の裏に、孤独が隠されていたこと。