入ってきた二人は、突然に銘々に勝手に周
りを省みずに楽しそうに酔った様に自然発生
的に変な歌を歌いだした。
 そして、手に持つそれを俺に突き出す。
 賢明な方はお気づきだと思うが、前者が椛
で後者が陵だ。
 まあ何だ。忘れた弁当を届けてくれたらし
い。
 いや、正確には俺が弁当を忘れるのを見越
して、朝から椛が持っていたらしい。

「それなら何故朝の内に渡さない?」
「お、持ってきてあげたのに、その態度です
かぁ?」
「いや、それに関しては礼を言うが、バスの
中とかで渡せば持ってくることもなかっただ
ろ?」
「それは、皆で一緒に食べたかったから。」
「はぁ・・・?」

 よくわからないが、俺と夏雅美と一緒に食
べるためにわざわざ弁当二つ持ちっぱなしだ
ったって言うのか?
 まったく持って理解不能だ。

「と言うわけだけど、夏雅美。いつもより騒
がしくなりそうだけどいいか?」
「……椅子が足りない。」
「そうか…じゃあ、森のプラザでも行って食
べるか?」
「……ん。」

 森のプラザとは、体育館に隣接していて、
木が等間隔で植えられている広場のこと。森
とはとても言えない程度の本数だが。
 そこにあるベンチに座り、各々の弁当の蓋
を開ける。俺のは……オムレツに…ポークソ
テーに…、海老ピラフか?えらく洋風だな。
いつもなら、同じ材料でも玉子焼きに生姜焼
き、海老入りチャーハンがいいところだ。
しかも、海老ピラフなんて炊いたご飯を炒め
た炒飯的なものじゃない。ちゃんと炒めた米
を炊いている。これは手間を掛け過ぎだ。
 そんなことを考えていると、椛が聞いてき
た。

「実はそれ、私作で~す。早起きして作った
んだよ。」
「おお~愛妻弁当か。あたしにも作って欲し
いな椛~?」
「いいよ~。腕に縒りを掛け」
「ちょっと待て。なんだその愛妻ってのは?
俺はいつからこいつのktyさ」