もちろん、2、3行でOKがでるわけが無
い。最低でもノートの半分…所謂、B5の縦
書きノートの半分を埋め尽くさなければなら
ない。
 それを今回の『夏の葬列』の授業が始まる
一週間前に宿題として出され、その授業の前
日までに提出しなければならない。
 そして、その作品が終わった時に、もう一
度感想文を書いて提出する。
 つまり、前回の作品―前回は『麗日(オデ
ンキ)』と『春でえむん』だった―の授業後
感想文と『夏の葬列』の授業前感想文を、ほ
ぼ同時並行で書き、提出せねばならない。
 作文とか感想文が苦手な俺にとっては、ま
さに地獄の一週間と化す。
作文、感想文の類いは、当然と言うか流石
と言うか、やっぱり椛の方が得意なわけで、
この宿題が出た時は椛に教えを乞いに行く。
 …まあ、教えを乞いに行くと言うか、殆ど
椛の言ったのを写しているだけだが…。

 閑話休題。
 そんな、苦手気味の国語だがテストのため
には、受験のためには、授業をしっかり聞い
て、ノートをとっておく必要がある。
 日々の積み重ねが必要なのだよ…。

き~んこ~んか~んこ~ん

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、休
み時間に入る時独特の緊張が解けたような空
気が教室を支配する。

「は~い。じゃあ、次回までに『夏の葬列』
に出てくる漢字の練習を提出を宿題とする。
では…」
「きり~つ。れ~い。」
「「ありがと~ございました~」」

 終わりの礼も心なしか気だるさを滲み出し
ている。
 しかし、国語の遠野は、よくも飽きずに毎
回宿題を出してくる。宿題する身にもなれっ
て言うんだ。
 まあ、そういう時代を通過して大人になっ
たんだろうけど。
 そうだ、次の授業は何だっけ?
 時間割を確認すると…理科だ。
 確か前回、次の時間は理科室よ~、とか先
生が言ってたっけ?
 理科室は二棟の七階にある。

「ああ、行って来るのは無理だな…」

 誰とも無しに、そう独り言を言い理科の準
備をする。行くってのは陵の教室にだ。

「お~い、楓。次の理科、移動教室だろ?早
く用意しろよ。」