私が通う南雲(なぐも)中学校には一年に一度、学年が変わる度にクラス替えがある。
仲の良い友達が同じクラスで喜ぶ人もいれば、同じクラスになれず落胆する人もいる。
私はその人達を横目にただ自分の教室へと足を動かした。

教室に入ると黒板に貼ってある座席表をみて窓側の前から3番目と確認する。
自分の席に座ると同等に後ろから声をかけられた。

「あ、桃華!やったね、また同じクラスだよ!」

「うん!今年もよろしくね美織ちゃん」

頭の中に浮かんだ言葉を愛想笑いと一緒に並べる。
実際に思っていないことなのに、それに気づかず笑顔を浮かべる美織ちゃんを冷めた目で見る。

「あ、もうそろそろ座らなきゃ。先生来ちゃう」

「うん、あとでね」

手をひらひらと振りながら返事をして窓から見える空を見つめた。

「HRはじめるぞ」

ガラリと大きな音をたてて開いたドアから、太っt…体格の良い人が現れた。

「今日から2年3組の担任、牧野邦宏(まきのくにひろ)だ。よろしく」

40代後半だろうかそこまで暑くもないのに汗をダラダラと流した先生が自己紹介をする。

「まずは、自己紹介だな。廊下側から自己紹介していけ」

「「「「えぇー……」」」」

クラスの人達が一斉に不満をもらす。
私もそれに関しては同感だ。
自己紹介なんて面倒なことはない。

「2-3になりました……」

人が自己紹介しているのも興味がなく、聞く気がないからまた、外の景色へと目線を向けた。

「おい、藤崎。お前だぞ」

もう私の順番が来たらしい。
重たい身体を椅子から持ち上げる。

「えと…、もと1年1組、藤崎桃華です。
女子バレーボール部に所属、趣味は読書です。よろしくお願いします」

私は静かに愛想笑いをし目立たない様に自己紹介をした。