記憶の片隅に追いやった昔の記憶を


錆びついてなかなか開かない引き出しを開くように思い出していく。



サンサンと照りつける太陽の下

自分の背丈以上ある虫取り網を握りしめ夢中に蝉を採りに行った日の

大きく感じた父の背中。



自転車で転んで足を切った時、母親が慌てておんぶして必死に病院へ連れて行った時の


背中のぬくもり。



「おいしい!」と言って妹と一緒に食べる姿を


微笑みながら見ている母の姿。



誕生日に欲しかったおもちゃを買ってもらい


飛び上がって喜んだ事。



ほんの些細な生活の

小さな出来事が少しづつ浮かんできた。



懐かしい公園や、母に連れられて行ったスーパー、怒られて閉め出された押入れの匂いも

タイムスリップしたかのように甦ってきた。