街路樹のイチョウの葉が綺麗な黄色に色づく頃、優と過ごしたこの部屋を出て行くことにした。

見習いコックの給料では到底払えない家賃なのと、新しい出発という意味で引っ越すことにした。


俺の就職が決まったと彼女に電話をすると、彼女は飛び上がって喜んでくれたのが声だけでわかった。

「お祝しなきゃね!!」


小さなケーキを彼女が買ってきて

いつかのあの日のように、二人で料理を作ってお祝いをした。 


自分の為には料理をする気にもなかなかなれず


その日、久しぶりに台所に立った


誰かの為に作れること


おいしいと言ってくれる存在が


物凄く



嬉しく



ありがたいと思った。