「ごめんね。優が寝てるから、車で送れなくて・・・。」


エレベーターに乗り込んでボタンを押しながらそう言った。


「ううん。全然。まだ電車もあるし。また呼んでね。」

「また、いつでも来て。賑やかなほうが楽しいし。」

「今度は何作ってもらおうかな?!」


俺の顔を見つめて笑ってそう彼女が言った。



静かにエレベーターの扉が開いて、少し向こうの大きなガラスの自動扉が見えた。


「ここでいいよ。優ちゃん心配だし・・・

駅までも道わかってるし。」


「ああ・・・でもタクシー呼んだから。

それ乗って帰って・・・ね。」



自動扉の向こうにチカチカとハザードランプを点けて停まっているタクシーを指さしながら俺は言った。



「えっ!!そんな・・・いいのにぃ。」


「呼んででもしとかないと、ももちゃん遠慮して電車で帰っちゃうでしょ。

大袈裟に思うかもだけど心配だから・・・


大事だから・・・


ほんと遠慮しないで乗って帰って。

もし、気兼ねだったらさ、またなんかうまいもん作ってよ、ね。」


彼女の肩をポンと叩いて顔を覗きこむようにそう言いながら

足取りの重い彼女を促すようにそっと腰に手を回してタクシーの前まで連れて行った。



自動扉が開くと同時にタクシーの扉はパタっと開いた。


「ありがとう。また、メールするね。ごめんね。ありがと」

申し訳なさそうな笑顔で彼女がタクシーに乗り込んだ。



「これ、お釣りいらないんで彼女、家の前まで送ってもらえます?」

タクシーの運転手にお金を渡しながらそう言った。



「じゃあ、また。オヤスミ。」


「おやすみなさい。」



バタン!!扉が閉まってタクシーはゆっくりと走りだした。