日々の鍛錬によって上手になった俺の包丁使いを

彼女が驚いてすごく感心してくれた。



「すごいね。上手!!ちょっと前までカレーが出来ないって言ってたのに・・・。」


「だいぶ上手くなったでしょ?!日々の訓練のお陰だよね。」


玉ねぎを切りながら得意げにそう俺は言った。



「うんうん。きっと春さんより下手な女の子いっぱいいると思うよ。」


「なんか最近料理が好きでね。

ちょっと、はまってきちゃったよ。


優が‘おいしい!!’って言ってくれると

‘よっしゃ!!’って、今度はもっとうまいも

のを作るっぞって意気込んじゃうし・・・。


‘おいしい’って言ってもらえるのって嬉しいよね。」



「そうそう。あたしも一人暮らしでしょ。

だからいっつも自分に作って

自分で食べてだから作りがいが無いんだよね。

おいしいって食べてくれる存在って大きいと思うな。」


彼女はじゃがいもの皮を剥きながら、しみじみと言った。


何か月前までは

俺も当たり前のように一人でコンビニの弁当をかきこむように食べていた。


その頃、おいしいという感覚があったのだろうか?


オイシイというより、味わうとか

何かを感じるとかそういう感覚があったのだろうか?



そんな事、考えもしていなかっただろう。


もっと言えば何かに関して深く考えたり

心で何かを感じたり

そんな時間


一瞬を大事だということ自体に俺は気づいてはいなかった。