相良棗が正門から姿を現した。
「うわぁ」
さすが学園の王子、オーラが違う。
彼の周りだけ輝いているように見える。
あたしが思わず見惚れていると
「相良様!おはようございます!!」
「棗様!!今日も美しい!!」
「相良様!お荷物持ちますよ!!」
あらゆるところから飛び交う敬意の言葉。
す、すごい…。
同級生なのに、この尊敬のされ方。
わざわざ相良くんよりさきに登校し、暑かろうが寒かろうが彼がくるまで待つ。
この学園の女子たちはなんて健気なんだろう…。
いや、相手が相良くんだからか…。
あたしはそんなことを思いながらデジカメを取り出してシャッターを切り始めた。
カシャッ
カシャッカシャッ…
しかし
「ちょ、み、見えない…っ!」
身長150センチ前半しかないあたしは、周りの女子たちにもまれてなかなか相良くんを捉えることができない。
くっそぅ…!
こうなることを予想してわざわざ30分も前から待っていたのに!!
そうしてあたしが女子群に紛れながら必死にシャッターを押していると
「おはよう、みんな」
相良棗があたしたち集団の目の前で立ち止まり、そういった。
キ、キターーーーーーーッ!!!
悩殺スマイルいただきましたぁあ!!!
カシャッ、カシャカシャッ…!!
あたしは女子たちが相良くんの悩殺スマイルに見惚れて動きをとめたのをいいことに、何度もシャッターを押した。
こんな至近距離で悩殺スマイル撮れるなんて…っ。