「…ひぃくんの嘘つき」


電話越しに聴こえたユキの声は、ひどく冷たかった。



嘘つき、なんて。
言いがかりもいいとこだ。



「しょうがないだろ?
雪が降ったせいで、電車が動いてないんだから」



状況を理解してくれようともせず、一方的に責めるような口振りのユキに、珍しく腹が立った。


既に1時間近く、凍るようなホームで電車を待ち続けてるというのに。


…こっちの身にもなってくれよ。






だけど、苛立ちの反面、


もうひとつの事実を知る僕は、罪悪感、とまではいかないにしても、気持ち悪いくらいのモヤモヤを胸に感じていた。





「そんなの…。

ひぃくんが塾になんか行かないで、約束通りにきてくれてたら、今頃会えてたんだよ?」