ふと、散歩していた足を止めた。 裏庭や中庭とまでは言えないが、小綺麗に植木が飾られている場所。 レンガ造りの階段が、なんともお洒落で。 そこに立つ後ろ姿に、 僕は、動けなくなる。 記憶にあるより長く、腰に届きそうなくらいの、ふわふわとした髪。 ボルドーのマフラーに、ベージュのコート。 風に揺らされた髪は、 やっぱり、柔らかそうで。 それを抑えた左手。 体半分振り返った彼女が、 僕に気付いた。 「…ひぃくん?」