その日の帰り、駅の前でなんとなくケータイをいじっていた。
すると、
「莉緒。」
と呼ばれたから、振り向くと、怜音が立っていた。
「話があるんだけど、あいてる?」
「うん、あいてるよ?」
と、なんか不自然な感じで誘われた。

私達は、マックでドリンクを頼んだ。

「莉緒…俺、好きな人が出来た。」
「え…」
びっくりした。
怜音がこんなこと思っていたなんて。
「莉緒の事はホントに大好きだ。だけど、それが恋愛感情とかじゃなくて、親友とか、そんな感情なんだ。」
「そ、そっか…」
「ごめん…だから、今日で終わり…になるのかな。」
「そうだね…。」
なんだか短調な返事しか出来なかった。

でも、私もその事にホントは気づいてたのかもしれない。
冷やかす周りに飲み込まれてただけなのかもしれない。

「好きな人って…?」
「え、ああ…。」
少し間が空いた。
「由香。」
「!!」

感情が顔に出てしまったかもしれない。
驚きで、声も出なかった。

由香とは、同じ中学だった子で女子からすごく人気があって、でもあんまりモテない子だった。
高校は、私たちの通ってる東高ではない。

ってことは、卒業する前からってこと…?

「莉緒とは、『親友』の関係になりたい。だから、気まずいとか考えてないで、普通に接してて欲しい。」
「うん…わかった。」

ん…?
待って。
これって怜音も自分も同じ状況にいたんじゃ…?
私は、先輩に心を揺らされていた。
怜音だって、そうだったんだ。

なんか、結構単純な恋の終わり方だったのかもしれない。

『彼氏』としての怜音はもういないけど、『親友』としての怜音はすぐそばに、これからもずっといてくれるじゃない。

これで私たちの恋愛は終わったんだ。

家に着いても、止めた自転車に乗ったまま、夕焼けを眺めていた。
夕方から夜に変わっていく様子が、はっきりと判る空だった。