ハァー…ハァ…

ハァー…


ピピピ



「沙世ー熱何度だった?」


スーツを着たお母さんが私の部屋に入ってくる。私は布団に潜って、必死で息をかけて温度を上げた体温計をお母さんに差し出した。







「…ん」

「どれどれ…うーん……37度6分か。まだちょっとあるわね」


体温計を見て眉をしかめるお母さんを前に、私は体調が悪い表情をして演技をする。





「………って!2日連続で騙されないわよっ!元気なら学校行けっての!」

「や、やめてよっ…」


かぶっている布団をはぎ取るお母さんは、寝ている私を無理矢理起き上がらせる。

そしてクローゼットを開けてハンガーにかかった制服を出すと、私にポンと投げつけて来た。





「ずる休みは1日までよ。じゃないとどんどんが行けなくなるんだからね」


ベットにいる私を見下ろすお母さんに、私は口をとがさせながらお母さんから目を逸らす。





「とりあえず今日は学校行きないよ。で、明日どうしても行きたくなからったまた仮病使えば~?」


ケラケラと笑いながら私の部屋を出ていくお母さんを見て、私は大きくため息を吐いた。



お母さんの言う通り、昨日は今のような手口を使って仮病で学校を休んだ。

凌哉くんと顔を合わせるのが嫌だったから、学校なんてとても行けないと思ったからだ。

テストも近いし今日はさすがに行かないとマズイとは思ってたけど…朝が来ていざ学校へ行くとなると、腰が引けてしまう…




凌哉くんと会うのが怖い…

あんなこと言ってしまったから、凌哉くんと合わせる顔がないよ。






「沙世ー!お母さん仕事行くけどちゃんと学校行きなさいよー」

「…はーぃ」


玄関からお母さんの声が聞こえ私はやる気のない返事をして、ベットから重い体を起こした。





とりあえずしたくするか…

行くか行かないかはそれから決めよう…




ベットから降りそのまま洗面所へ行き、顔を洗って歯を磨いた。そしてまた自分の部屋に戻り、部屋着から制服に着替えリビングに行って冷蔵庫から野菜ジュースを出して飲んだ。


洋平はとっくに学校へ登校していて、お母さんも仕事に行ってしまった今家には私しかいない。

3人家族で住むには広くはないアパートの間取りだが、1人ぼっちで家にいると広すぎるくらいに感じる…




1人でいるのは嫌いじゃないけど、今の私の状況だとなんだか寂しいなぁ…

凌哉くんのことふったくせに、寂しくなるなんて意味わからないに…ってゆうか、あれは凌哉くんのことふったってことになるのかな…?


ずっと私のこと好きって言ってくれてた人に、あんな言葉を言ったってことはそういうことなのかな…

あんなかっこいい人をふっちゃうなんて、罰が当たるなきっと。





「はぁ…」


出るのはため息ばかり…

半分くらい飲んだ小さい紙パックの野菜ジュースをテーブルに置き、私は椅子に深く腰掛けるとまた大きくため息を吐いた。






「行きたくないなぁ…」


口からポロッと本音が出てしまった…


行きたくないけど、行けなかったらお母さんに怒られるよね。落ち込んでる時だからこそ、少しでも面倒くさいことは避けたいしなぁ…




ピンポーン…