凌哉side


高校の入学式。俺と似たタイプの女がいると思った…

茶色くて長いストレートの髪に白くてきれいな肌、背はすらっと高くちょうどいい女体型。

どちらかというと大人びた顔立ちと、真が強そうでしっかりとした雰囲気。そして社交的ではない根暗っぽさと、真面目さと優しい雰囲気を漂わせていた…



それが沙世の第一印象だった。


俺も昔から大人びて見られる事が多かったし、社交的ではなく一人でいる方が好きだった。中学の時は裏で「一匹狼」とか言われてうざかったけど…今思えばそれが事実。

同じ中学の圭吾と仲良くなるまでは、俺はずっと暗い人間だったと思う。


そんな俺が高校に入学してクラスの女達が沙世を「元ヤン」と裏で呼んでいるのを耳にして、第一印象よりももっと沙世のことが気になった。

俺が「一匹狼」であいつは「元ヤン」と呼ばれている…全く違うあだ名だけど、意味は同じように思えた俺は沙世に親近感を覚えた。


そして遠足の時に沙世と同じ班になってあいつに色々とちょっかいを出すと、沙世はすごい面白い奴だった。俺はますます沙世が気になった…

だから…遠足で牧場に行ったあの日…沙世が寝ている俺の上にダイブして来た時は…運命的な出来事のように感じたんだ。

きっと…誰かが俺に沙世と近づけるチャンスをくれたとしか思えなかった。だから沙世にキスをした…

俺から離れられないように…

せっかくのチャンスを逃したくない。誰にも沙世を渡したくなかった…


その時に確信した。俺は沙世が好きだって。

入学式の時に同じ匂いがするって感じたのは、今思えばただの一目惚れだったのかもしれない…



それから俺は沙世に、ちょっかいという名のセクハラをしまくり今に至る(笑)


もう何回あいつにキスしたんだろう…

まだ付き合ってないからいけないってわかってるんだけど、あいつを見ると体が勝手に動く。だから仕方がないからまあいいか。


沙世を知るにつれて日に日にあいつのことを好きになってる…

隆也のことも沙世はすごく親身になってくれた。マジで嬉しかった…

沙世に出会えて良かった…あいつの母ちゃんも弟の洋平もすごくいい人だし、それを踏まえて本当に良かった。


沙世以外考えられない…


だからもうセクハラは控えて、ちゃんと沙世に告白しようと思って昼飯に誘ったのに…翌日高熱が出て学校を欠席。

張り切っていたせいか遠足熱的なものを出してしまい、熱でダウンしながらも沙世にどうわびを入れようかと考えていた時だった…


突然沙世がうちに来て…正直すごい焦った。女がうちに来ることなんてなかったし、それに風邪で弱ってる自分を見られたくなかった…

沙世に弱い自分は見せたくない。まだちゃんと付き合ってるわけじゃないから、マイナスになるような事は避けたかった…

だけど沙世は…いつも通りに振舞ってくれた。いや…いつもよりずっと優しくしてくれた…



心配そうに俺を見る目…

俺の額に触れた手…

キッチンに立つ後ろ姿…

作ってくれた料理…


どれも…全部優しかった。心から嬉しかったし、改めて沙世に惚れ直した。

おまけに今日も俺の看病に来てくれて、洗濯とか飯も作ってくれた…

これってもう付き合ってるっていうのか?いや、違うよな…

こんな事考えてる自分が気色悪い。


予想してたよりも、遥かに俺は沙世にハマっちまってる…沙世はどうなんだろう…俺の事をどう思ってるのかな。






「……」


あれ…寝ちまったのか。


沙世の作ってくれた昼飯を食ったあと、ソファーに寝転がってテレビを観ていたらそのまま寝てしまったらしい…

テレビに背を向けて横向きになって寝ていた俺は、毛布をはいで体を起こしキッチンの方を見た。




…沙世がいない。トイレかな?

ん?


ソファーから降りようとした時、床に座ったまま俺が寝ていたソファーにうつ伏せになって寝ている沙世に気づいた。




こいつも寝てたのか…?


俺はすぐに沙世に毛布をかけ、とりあえずソファーから降りる。そして沙世ひょいと抱えてソファーに寝かせた。



ゴムで束ねていた沙世の髪が緩んで少し乱れていて、上に着ているゆったりとしたグレーのセーターがズレて、鎖骨と肩が出てしまっている。

俺は毛布をかけてそれを隠し、スヤスヤと寝ている沙世の顔を見た…