「沙世ちゃんて顔に似合わず優しいね…」

「う…よく言われるよ」


クールな顔してる割に結構優しいとか言われすよ!





「今まで会った女友達の中で…一番優しいかも…」


妃華ちゃんは遠い目をしてポツリとそう言った。その表情から何かあるんだろうと察した私は、思い切って問いかけてみた。






「妃華ちゃんの高校の友達ってどんな人達なの?」

「友達?そんなの上辺だけよ。ちょっと金持ってる程度の家の子供ばっかり集まってる学校だから、子供同士も自分の家の自慢大会で…正直超つまんない。高校の友達に本当の自分なんてさらけ出したことないし」

「そうなんだ…」


お金持ちの学校って…イメージ通り色々あるもんなんだな。





「だから凌哉や圭吾が羨ましいの。中学までは私立の金持ち学校組だったから、本当はこっち寄りだった2人が今は普通の県立の高校に行ってるでしょ?友達も多くて毎日楽しそうだなって思う…」

「妃華ちゃん…」

「沙世ちゃんもだよ?春子と中学からずっと一緒なんでしょ?そういう友達は私の通ってる学校にいたら出来ないよ…だからすごく羨ましいの…」


ふわっと吹いた風が妃華ちゃんの柔らい髪を揺らし、段々と沈んで行く太陽が私達を照らした。





「羨ましくて…春子に八つ当たりしたりキツく当たっちゃった。ごめん…せっかく沙世ちゃんと友達になれたのに、春子の方が沙世ちゃんと仲いいだなーとか思うと嫉妬しちゃって…」

「ふふ、大丈夫だよ。春子はああゆうサバサバした性格だし、それに結構楽しんでると思うよ」


私から見て、春子と妃華ちゃんのあの絡みはじゃれ合ってるように見えるし。





「それに…もう嫉妬なんてする必要ないよ。私も妃華ちゃんの事…もう上辺だけの友達だなんて思ってないよ。妃華ちゃんも私も大切な友達」

「沙世ちゃん…」


最初は正直苦手だったけど…今はこの子の事本当に憎めないし、いい子だなって思う。

凌哉くんの幼馴染みっていう事以前に、これからも仲良くしていきたいな。





「ありがと…ありがとう沙世ちゃん」


妃華ちゃんは少し涙を浮かべながら、にっこりと微笑んだ。

また妃華ちゃんとの距離が縮まったような気がする…













「沙世ちゃん…とうとう夜になっちゃったね…」

「そうだね…」


数時間後。辺りは真っ暗で静まり返っている中、私達は動かずにじっと助けを待っていた。

未だに人っ子一人この道を通らないし、車も一台も来ない。






「もうすぐ8時になるよ…」

「みんな心配してるかな」


凌哉くん…会いたいよ…

今すぐ…






ガサガサっ




ビクッ!







その時、後ろから物置がして私と妃華ちゃんはびっくりしながら後ろを振り返る…




「な、なに今の…」

「人?それとも…動物?」


振り返ってみても、辺りは真っ暗で何も見えない。







ガサガサ

ガサガサっ…



また物置がして、怖くなって立ち上がり私達は抱き合いながらブルブルと震える。






「ど、動物なら鹿とか…?」

「…熊かもよ?」


熊になんて遭遇したらどーしたらいいの!?





ガサガサっ…ガサっっ



草をかき分けるような音がどんどんこっちに近づいて来て、よく目を凝らして見ると人のような物がこっちめがけて走って来る。




「ひ、人!?」

「嫌だ!それはそれで怖いっ」


パッと見る限り男ということはわかるが、見覚えがない人物…

その男は私達を発見すると、ものすごい早さで走って来た。






「きゃーーーーっっっ!」


怖さが限界になり、私達は大声で叫んだ。




誰も通らないこんなところで叫んでも意味無いのに…でも怖い。


助けて!








凌哉くんっ………








ドカッ





え。




足音が近づいて来る音と同士に何かを殴るような音がして、つぶっていた目を思わず開けて見ると…そこには凌哉くんの姿が!

そして下に目を移すと、さっきの男が地面にうずくまって倒れている。


もしかして…こいつに襲われそうになった私達を、凌哉くんが助けてくれたの?

本当に助けに来てくれた…

願いが届いたんだ…






「あ、の…凌哉く………」


背を向けていた凌哉くんがこっちを振り向くと、めちゃくちゃ怖い顔をして私を見下ろした。





ひぃっ…!


暗闇の中でも凌哉くんの表情がわかり、私は恐怖で氷のように固まった。







「沙世…てめえ………」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」


とりあえず何度も謝る私に、凌哉くんは怖い顔をして近づいて来た。







「私が悪いの!私が沙世ちゃんを誘ったの…だから沙世ちゃんを叱らないであげて!!」


妃華ちゃんが必死になって止めに入るが、凌哉くんの表情はまだ怖い。