突然部屋のドアが開き、リビングルームの方から溝口くんの声が聞こえて来た。






「嫌!」


ドンッ




「いてっ」



ドスンッッ








「…何やってんだお前ら?」


凌哉くんを思いっきり突き飛ばしした私は、ベッドからすぐに起き上がって何故か寝室の壁側に逃げた。

凌哉くんはベッドから転げ落ちて床に転倒。寝室を覗き込む溝口くんが、そんな私達を見て不思議そうな顔をした。







「ちょっと…虫が出て」


とっさに私の口から出た言葉がそれ。普通に嘘をついてしまった…





「えーマジかよ!?ゴキ?俺らの部屋にも出たら嫌だなぁ~な?凌哉???」


しゃがみこんで話しかけてくる溝口くんに、凌哉くんは不機嫌に「ああ…」と頷いて起き上がった。


もしかして…怒ってる?






「つーか、2人共早く隣の部屋来いよ!みんな待ってるぜ」

「…何で?」

「いいから早く!」


寝室から駆け足で出ていく溝口くん。



みんな待ってるってなんだろ…

何かやるのかな?


まさか怖い話とか?私そういうの苦手なんだよなぁ…







「はぁ…」


すると凌哉くんが深いため息をついたあと、クルッとこっちを向いて私に近づいて来た。

表情はまだ不機嫌そうなまま…






「あのっ…突き飛ばしてごめんね!びっくりしてつい…」


ここはとりあえず謝った方がいいと思う…





「…別に。せっかくのムードを壊したのは溝口だし…お前のせいじゃねえよ」

「凌哉くん…」


良かった。

私には怒ってないみたい…





「ま、溝口が来なかったら止まらなくなってたかもだから、お前にとってはラッキーだったのかもな」

「えっ…」


ニヤッと微笑む凌哉くんのその言葉に、私の顔はボッと赤くなり火がついたみたいに熱くなった。



これは冗談なの?

それとも本気……???






「…待ってるみたいだし俺らも行くか」


1人でドギマギしていると、凌哉くんが私に手を差しのべて来た。




「うん」


私は凌哉くんの手を握り、スマホをポケットに入れたあと2人で部屋を出て男子部屋へ向った…

さっきの凌哉くんの言葉に内心まだドキドキしつつも、今はとりあえず旅行を楽しむ事にした。







ガチャ…



「あーやっと来た」

「何やってたのー?」


男子部屋に入ると、リビングのソファーに隣同士で座っている春子と柳田くんが話しかけて来た。





「カップルに何やってたなんて聞いちゃダメだって~」


キャハハハと笑いながらジュースを飲む妃華ちゃんに、春子達は顔を赤くする。私も同時に顔が赤くなった…


今の私にその言葉はすごく突き刺さるんですけど…






「…お前ら何やってたの?」


みんなが囲んでいるテーブルの上には、割り箸やマジックが散乱している。

私と凌哉くんはそれを不思議に思いながら、空いているソファーに並んで腰掛けた。






「王様ゲームやろうと思ってさ♪」

「割り箸でくじつくってたところなんだ」


王様ゲーム?

…って…例のあれだよね?


私やったことないんだよな…







「王様ゲームはダメ」


すると、凌哉くんがソファーにあぐらをかいて座り直すと、そう言って眉をしかめた。






「どうして~?」

「何で?」


妃華ちゃんと柳田くんが首を傾げる。私も内心同じ気持ちだ。






「…どうしてもダメ。俺らはパス」

「えっ」


私の肩に腕を回す凌哉くん。


俺らはって………私も?









「凌哉達来たかー?んじゃ、王様ゲームやろうぜ♪」


寝室から出て来た溝口くんは、小声でそう言いながら私達に近づいて来た。