私は素早くズボンを履き替えて、寝室のドアをそっと開けると…





「わ!」


寝室のドアのそばの壁に凌哉くんが寄りかかって立っていて、驚いた私は思わず声をあげてしまった。





「…びっくりした。そこにいたの?」

「まあな。終わった?」

「うん…お待たせ」


すると、凌哉くんは寝室の中をじーっと覗き込んで来る。






「こっちの部屋の寝室の方が広いな」


そう言うと、凌哉くんは寝室の中に入って部屋をキョロキョロと眺め始める。私も凌哉くんに近づき、一緒になって部屋の中を見る。





「そうなの?」

「ああ。二段ベットが3つあってさ…」


隣の部屋は二段ベットなんだ…

ここは4人部屋らしいから、寝室にはベッドが4つあるから余計に広く見えるんだよね。それに…ここは二段ベットじゃなくシングルベッドだし。






「妃華の奴…俺の誕生日プレゼントにくれたのに、自分の方がいい部屋使ってるじゃねえかよ」

「ハハハ。でも凌哉くんの部屋の方が広 いんじゃない?そっちは6人部屋でしょ?」

「部屋の広さはここと変わらないかな」

「そう…」


…ということは、やっぱりここの方がいい部屋ということになるのかな?






「妃華の奴…多分お前と旅行に来れて嬉しいんだろうな。あいつは俺にというよりも、今は沙世との仲を深めたいんだと思うよ」


そう言うと、凌哉くんは手前の一番近くにあるベッドに腰掛けた。






「…そうなのかな。本当にそうだったら嬉しい。私も同じ気持ちだしね!」


私に対する態度は明らかに違うし、今日は妃華ちゃんのいい所がたくさん見られた気がする。春子と喧嘩さえしなければ、今の妃華ちゃんには全く不満はないよ。









「何はともあれ妃華には感謝だな。お前と旅行に来れた事が俺は一番嬉しい」

「凌哉くん…きゃ!」


ベッドに腰掛ける凌哉くんに腕を引っ張られて引き寄せられた私は、そのまま抱きしめられて半ば強引にベッドに押し倒された。






ドサッ…



凌哉くんは私を押し倒すと、そのまま私の隣に寝転がり嬉しそうに微笑む。







「…ど、どうしたの?」


寝室に凌哉くんと二人でいる事さえドキドキするのに、ベッドに並んで寝転がってるなんて…心臓がいつ飛び出てきてもおかしくない状況だ。


この感じ…前にも一度あった。

そう。凌哉くんの誕生日の時だ…








「せっかく沙世と2人きりなんだし、ちょっとくらいこうしていたいと思ってさ」

「…そう」


な、なんだ…そういう事か…






「あれ?もしかして違う期待してた?」

「えっ…」


私に問いかける凌哉くんの顔は、どこか意地悪でおまけにニヤニヤしている。






「してないよっ!」

「ふーん…全然?」

「ぅ…」


ぐんと顔を近づけ、おでこ同士をコツンと当てる凌哉くん。


この雰囲気わかる…

お互いがキスしたいって思ってる…








「…」



2人の口が閉じると、私は自然に目を閉じるだけ…そうしたら…














ガチャ




「凌哉ー?萩原ー?まだか?」