時雨は屋上にある柵に両腕を置き、町を眺める。

光は時雨の横に立ち、答えを待っている。


時雨は目を閉じ考える。


あの日感じた気持ちを、もう一度振り返り、考える。


しばらく光は黙っていたが、痺れを切らしたらしく口を開いた。


「なぁ、しぐ……」


「……だよ」


「え?」


「いやだよ。楓を誰かに取られるのは」


「……」


光は軽く目を見開いたあと、ニヤニヤし出した。