「でもね」 「うん」 「時雨くんだけよ。 私に普通に話してくれて、“友達”だって言ってくれたのは」 楓は顔を上げ、時雨を見た。 その目にはうっすらと涙が滲んでいたが、それを吹き飛ばすような笑顔がそこにはあった。 「……っ」 時雨はその表状に呑まれた。 そこに、今までのか弱い少女はいなかった。 そこには自信や信頼、喜びに満ちた、美しい少女がいた。