「……はーぁ、んで時雨」


「んあ?」


時雨は目に滲んだ涙を拭いながら返事をした。


「最初の質問だけど、何で夜森さんを見つめてたんだよ」


「特に理由はないよ。ただ視界に入ったから、そのまま何となく見てただけ」


「もしかしてお前、夜森さんのこと……」


「んー、どうかな? 楓とは昨日初めてまともに話したばかりだから、光が言いたいような感情はないと思うよ」


時雨は思ったことをそのまま伝えた。


ただ時々、楓の仕草が可愛いななんて思うことはあるが『好き』という感情が有るか無いかと言われても、まだ時雨にはわからなかった。