「何かな、楓さん?」
女子生徒の名前は夜森楓(よのもりかえで)という。
楓は時雨の机に両手をついた。
「あのね、時雨くん。あなたに約束をお願いしに来たの」
普通なら、ここで皆は『は?』と言うだろう。
突然、自分の机までやって来た女子生徒が『約束をお願いしに来たの』と言ったらまぁ、それが普通の反応だろう。
だが、時雨は特別驚くこともなく頷いた。
「いいよ。何の約束かな?
宿題をかわりにやってほしいの?
それとも掃除を変わってほしいの?」
時雨はにこやかにそう言った。
ただ少し台詞に嫌味が混じっている様に感じたのは気のせいではないだろう。
しかし、時雨のそんな態度に怒りを見せず、その例示に楓は首をふった。