「相場も十分かわいいと思う…」


と、隆弘くんがごにょごにょ何かをつぶやいた。


「ん?何か言った?」


問いただすと、


「なんにも!」

というので、気にしないことに。


そうしているうちに予鈴のチャイムが鳴ったので、隆弘くんとバイバイして教室に戻る。



放課後、言われた通りにしおりをホッチキスでとめて仕事をこなしていく。


早く部活に行きたい一心で手際よく作業をして、あっという間に仕事を終える。


そして先日届いたばかりの新品の陸上部のジャージに着替えて、走って部活へ向かう。


部活へ向かうとみんなちょうど休憩中のようだったので、


「お疲れ様です!」


と部員のみんなに挨拶をして、カバンをマネージャー用の部室に置きにいこうとしたとき、


「きゃっ!!?」


石ころに足を取られてこけてしまいそうになった瞬間…


「慧!」


グイッと腕を掴んだのは隆弘くん。


「あっぶねー、大丈夫かよ?」


「あ、ありがとう、隆弘くん…」


なんだか、前に樋口先輩に助けてもらったのを思い出す。


「慧、またこけたの?」

首筋に汗を伝わらせてふわりと笑いながら歩いてきたのは、樋口先輩。

「あ、樋口先輩、こんにち……」

「名前……」



名前?



……



「あ"っ!!!!」


しまった…

ついついまた蓮先輩のこと、樋口先輩って……


「あぁ、あの!!これはそのー!
まだ慣れなくてですね!⁇」


「部活終わり、俺のとこ来ること。」


低音の声はいつにも増して低音に聞こえてしまった。


なんてこった、やってしまった。

罰ゲーム…

決定だ……