「いやいや!やっぱり借りたもんはすぐに返せって言われてるしな!
ほんと、助かった!ありがとう!」


「慧、隆弘にタオル貸したの?」


樋口先輩が問いかけてきた


「はい、汗だくでタオルもきれてたので」


「へー」




樋口先輩…… 怒ってる…?


「じゃ、本当にありがとう!!!!
また明日な!
蓮先輩もお疲れっした!!!!」


ガバッと頭を下げて颯爽と隆弘くんは、行ってしまった。


「いや〜、まさか今日じゅうに返してくれるなんて、優しいんですね」

と先輩に話しかけても、

「んー」

とか

別の話をふってみても、そっけない返事ばかりで……


「樋口先輩……
なにか怒ってます?」


聞いてしまうことにした


「別に」


いやいや、いつもなら爽やかに優しい返事を返してくれるのに。


やっぱりなにか怒ってる


もしかして……


「名前…呼べなかったからですか?」

恐る恐る聞くと……


「んー、それもかな。」


“それも”とは一体?


「それもってーー…」


「ま、とりあえず俺の名前呼んで」

「え!!」



言わなければよかったと思っても、もう遅く


そしてまた、いつの間にか腕をしっかりと掴まれていて逃げれそうにもない


「それと、これからはちゃんと下の名前で呼んでね。
呼ばないと罰ゲームあるから」


「ば、罰ゲーム……?」

「うん」


ニコッと可愛らしく笑うが…

こればっかりは本当に辛い……


他の友達は好きな人を普通に名前で呼んでいるけど、呼べる方法を教えて欲しい…



でも、呼ばないと何されるかわからないし…


もう本当に腹をくくってーー…!!


「れ、蓮…… 先輩…」




声が震えた


顔が熱い


先輩の顔が見れない……



「うん。百点満点」


満面の笑みで私の頭を撫でた