「あ……あ……」


鏡花は目を見開き、食い入るように桜の木を見た。

木の真ん中に裂け目が入り、黒く焦げている。


「お……う、か?」


鏡花のか細い声は吹き荒ぶ風雨によって掻き消される。


「おうか……、桜花、桜花!」


鏡花は木に駆け寄る。


まだ熱の残る木を拳で叩く。


「桜花! 桜花! 桜花!」


手に破片が刺さろうがお構いなしに拳を振り上げる。


「いるんでしょ!? 桜花!」


このとき、森から霞が白蛇の姿のまま物凄い速さで桜の木の元に向かっていた。


急いでやって来た霞が目にしたのは、泣き崩れる鏡花と、大きく裂けた桜の木だった。