◇◇◇


しばらく泣いたら、鏡花は憑き物が剥がれたように、スッキリとした顔をしていた。


「気持ち、軽くなった?」


「うん……」


まだ少し目元が赤かったが、最初に比べて明るく見えた。


「そっか、よかった。


そうだ、鏡花ちゃんに僕のとっておきの景色を見せてあげる」


「とっておきの景色?」

「そう。おいで」


桜花は鏡花に手を差し出した。


鏡花はゆっくりと桜花の手を取った。


その小さな手を桜花はしっかりと握り、そのまま鏡花を抱き上げた。


「きゃ……!」


持ち上げられて高くなった景色に鏡花は短く悲鳴をあげる。


だが、桜花の行動はこれだけではなかった。


片手で鏡花を抱き、そのまま見事に花を咲かしている桜の木に近寄った。

そして、空いている方の手で手頃な幹を掴むと、登り始めたのだ。


「きゃあぁぁ!!」


抱き抱えられたままという不安定な状態で木登りを始めたため、鏡花は悲鳴をあげた。