鏡花は残念そうに唇を尖らせる。


「また話してあげるから、早く帰りな」


「は~い」


鏡花は草の上から立ち上がるとスカートの汚れを払って桜花に背を向ける。


「またね、桜花」


「またね」


鏡花は首だけ振り返り手を振る。


それに桜花も振り返した。


鏡花は馴れた足取りで山道を下りていく。


「転ばないでねー」


桜花の注意にひらひらと手を振った鏡花は次第に見えなくなった。