「どうしたの?」


立ち上がった鏡花に合わせて、桜花も立ち上がった。


「……帰る」


「そうか。じゃあまたおいで。


声を出して泣いてもここには誰も来ないから大丈夫だよ」


桜花のその言葉に鏡花はばっと振り返った。


鏡花の顔はみるみるうちに赤くなり、口をぱくぱくさせている。

「クスッ……大丈夫。


誰にも言ったりなんかしないよただ、」

桜花はそこで言葉を切り、鏡花をフワリと抱き締めた。


「君みたいな小さな子が声を押し殺して泣いたら駄目だよ。


悲しい時は、いつでもここに来たらいい。


そして大きな声で泣くんだ。


僕は笑ったりしないから……」