「やぁ、こんにちは」
青年は少女に目線を合わせるためにしゃがんで、そう挨拶をした。
少女は突然目の前に現れた青年を見つめたまま呆然としている。
「凄い風だったね。大丈夫?」
そんな少女に気が付いていないのか、青年は少女に話しかける。
「……れ」
「ん?」
「あなたは、だれ?」
少女は開口一番そう訊ねる。
青年は自分を指差し、こう言った。
「僕? 僕は桜花っていうんだよ」
「おうか?」
「そう、桜花。桜の花で桜花だよ。貴方のお名前は?」
「え……あ、き、鏡花」
自分の名前をたずねられ、少女、もとい鏡花は小さな声で答えた。
「へー、鏡花ちゃんか。よろしくね」
桜花は人好きのする、優しい笑みで鏡花に手を差し出した。
鏡花は手を差し出すべきか否か、悩んでいたが、そっと桜花の手の平に自分の手の平を重ねた。