襖の奥にあるのは仏壇だった。
中に入ると薄暗かったので、部屋の明かりをつける。
薄暗かった部屋が明るくなり、はっきり見えたのは、隅の方にある来客用の座布団や椅子なんかだった。
その他、家具などはない和室だった。
鏡花は仏壇の前に行くと、ロウソクにマッチで火をつける。
仏壇の前には一人の女性が微笑んでいる遺影があった。
その横には位牌がある。
そこには皐月遥(さつきはるか)と書かれていた。
鏡花の姓は皐月、つまり鏡花の母親だった。
鏡花は線香数本に火をつけ、鈴を鳴らす。
室内に澄んだ音が三回続けて響いた。