あの日、雷が落ちた年から葉の一枚、花のひとつもつけていない。


あんなに綺麗だった桜はここ三年、観ることができていないのだ。


この木以外にも村に桜の木はあるが、やはりこの木以上に綺麗な桜は中々ない。


今年は桜花の桜が見れない三年目の春だった。


悲しさで俯いていると鬼囮爺がこちらに気が付いた。


「おう、来ておったなら来たと言わんか。
まったく……」


鬼囮爺はいつもの素直でない言葉を掛けてくる。

鏡花はその言葉にクスリと笑う。それが少し有りがたいと思った。


「何を笑っておるのだ!」


鬼囮爺はプンプン怒っているが鏡花にはそれも面白くクスクスと笑っていた。