「そうか。あのとき鏡花が言っていたのはその桜の神様だったのか。


お前の気持ちに気づいてやれなくて悪かったな」


「私はもう歳であの山には登れないけど、私の代わりにお礼を言ってきておくれ。


孫をありがとう、とね」


祖母はにっこりと笑って手を握ってきた。


その手の温かさと祖父母の気持ちに鏡花は涙を溢した。



それは悲しさから涙ではなく、嬉しさからの涙だった。