しばらくその景色を楽しみ、最初と同じように桜花が鏡花を抱いて降りた。


「さぁ、暗くなってくるから家にお帰り」


桜花の言う通り、陽はすでに傾き始め、山の向こうに赤い太陽が見えていた。


「桜花は?」


「僕は鏡花ちゃんが帰ったのを見届けてから帰るよ」


「えー、一緒に帰ろうよ」


「だーめ。鏡花ちゃんが僕に着いてくるかもしれないでしょ?」


「うっ……」


どうやら図星のようだった。


鏡花は二の句を告げなくなってしまった。


「さぁ、家の人が心配するから早くお帰り」


桜花は少し語気を強くして言った。