日誌を書いているうちに、
気付けばもう6時になる頃だった。

「…あ、もうこんな時間…」

橋本くんは、ごみ捨てに行っているようで
教室には居なかった。

「…日誌、終わっちゃったな…」

さて、どうしよう…。

いつも一緒に帰ってる友達には、
先に帰っててと言っちゃったし…

私の家は電車で2駅行ったところにある。

もう、4月とはいえ
6時にもなると少し薄暗かった。

「…何、してるの」

ぼーっと、窓の外を眺めてると
後ろから声がした。

「え!?…あ、橋本くんか…」

びっくりしたぁ…

「…?」

少し眉を寄せて、
何?とでも言いたげな顔をしてる橋本くん。

「あ、ご、ごみ捨て!終わったの?」

「…終わったから、ここにいるんだけど」

……あ、はい。
そうですよね…。

「…高梨さんも、日誌終わったの?」

「あ、うん…!」

「………」

「………」

無言の空間…。

「「あのさ」」

被った…!

「「いいよ、そっちからで」」

また、被っちゃった!!

「…先、いいよ」

私が焦ってると、橋本くんが言った。

「え、あ、うん。…もう6時になるけど、橋本くん大丈夫?」

「…何が?」

「え、電車とか…?」

聞かれてるのに、疑問系になっちゃった!

「…別に平気」

「あ、そうなんだ…」

…って、よく考えてみれば男子だし平気なのかな?

「…そっちこそ、平気なわけ?」

「え?」

「時間」

何が?と聞き返そうと思っていたら、先に言われた。

「…あ、私は電車あるから…」

「……」

え、何だろう…。
ずっと私の方見てるんだけど…

「帰らないわけ?」

「…え?」

「だから、帰らないのって聞いてるんだけど?」

いや、帰るよ!

「帰るなら早く支度しないと、あともう少しで電車行くよ」

「えっ…嘘!」

ケータイを取り出して、時刻表を確認する。

「わ!やば!あと、5分もないじゃん!」

幸い、この学校から駅までは走ったら2分あるかないかだ。

急いで、準備を済ませて

「…は、橋本くん、今日は日直ありがとう…!」

橋本くんにお礼を言った。

「…ありがとうも何も、当番だから。」

あと、と付け加えて橋本くんが言った。

「早くしないと、本当に電車行くけど」

「あ、うん!じ…じゃあね…!」





橋本くんの忠告もあってか、なんとか電車に間に合った。

こんなに走ったの、いつぶりだろう…。

ふと、電車の窓から下を見てみると自転車に乗った橋本くんがいた。

「…あ、橋本くんだ」

橋本くんの他に、おそらく部活帰りであろう男子たちがいた。

みんなで楽しそうに笑ながら、帰っていた。


…やっぱり、橋本くんはわからない人だ。

男子といるときは、あんなに楽しそうに笑うのに…

他の人といるときは、笑わないどころか全然しゃべらない。

「うーん…」

人見知りなのかな…?


どうして、こんなにも橋本くんのことが気になるのか自分でもわからなかった。