急の自己紹介に、きっと彼女は驚いただろう。



ーーきっと、と言うか絶対。





だって、返事が返ってこないのだもの。
少し寂しい。




俺は、ここで彼女の名前を聞くのは野暮だと思ったが、白い彼女のコトが気になり、俺は結局言ってしまう。




「人が名前を教えてやってんだ。

普通は自分の名前も明かすんじゃないのか?」




言ってみたはいいものの、

少しばかり上から目線の物言いになってしまった。




ここでも、俺は《ズドーン……》と落ち込む。




「私は、


【一之瀬 羽紀】です。」





無視される覚悟はできていた。


ーーが、彼女は俺の問いに答えてくれた。







だが、名前を聞いたところで


『可愛い名前だね☆』


なんて言う、キザな台詞しか頭に浮かばなかった俺は「へ〜〜……。」と、場を誤魔化した。



ーーあれ?


会話、終わっちゃった。




結局、俺は自らで作ったチャンスを無駄にしてしまった。







もっと、話したかったのにな……。





そっと、頭の中をよぎる言葉が信じられないほど暖かかった。





ぼーっと、していた俺の隣にはいつの間にか白い“彼女”が来ていた。




いや、ここはちゃんと、名前で言ったほうがいいだろうか?


一之瀬さん?



硬いかな……。



羽紀ちゃん?


……『ちゃん』付けは結構勇気いるな。




じゃあ、羽紀?




羽紀……。


呼んでみようか……。



いや、やっぱ、恥ずかしい!////





俺の頬が熱くなるのを感じた。


そして、そんな俺を覗き込む彼女の顔が見えた。




余計に熱くなった。