そして、私たちはまた、山道を下って行く。
途中、彼はこんなコトを言った。
「この帽子、そんなに大切なモノなの?」
ーーって。
「もちろん‼︎」
私は元気よく答えた。
「……そう。」
だが、気持ちまでは伝わらなかったようだ。
私のお気に入りは取り返せれるのだろうか……。
心配になる。
ーーだって、
山道はもう、
終わりを遂げようとしていたから。
どうしよう……。
どうしよう……。
「じゃな。」
「ーーーーー!ーー」
考えていても、何にもならない。
私のお気に入りは、
戻ってこない。
「待ってよ‼︎」
私は彼に向けて言った。
「待ってよ、
それ、私のお気に入りなの……。
私のなの……!」
今度は、
もっと強く、
自分のモノというコトを主張した。
彼は、振り向かない。
ここが、潮時なのだろうか。
私は、彼の反対方向に向いた。
諦めようとしていた。
「また明日、この場所で。」
私の後ろ声が聞こえた。
振り返って見る。
彼は、私を見ていた。
彼の頬には、赤らみが残っていた。
だから、私は彼を信じた。
彼に、私のお気に入りを託した。