母は言う。

学校楽しい?って。

うん。。楽しい。けど切ない。

だって何にもおもいだせないんだもん。

友達とのこと、部活のこと、名前もすべて。

先生の名前は覚えている。

けどクラスメートの名前。座席表を見て一から覚えるしかなかった。

今日は雨。

天気がどんよりしていると気持ちまでどんよりする。

はあ。とため息をついた私に隣の席の子、亜実ちゃんが、なんか

いろいろとたいへんそうね。と同情した。というより心配してくれたのかも。

次の授業は音楽。

こんどこそ、加奈子ちゃんと話さなきゃ。と頭の中でシチュエーション。

チャイムが鳴る。

あ。気が付けばノート全然書いてない。

加奈子が心配して、なんかあったのといった。

そして、わたしは思い切って聞いてみた。

<私のこと、どう思ってる?>

<どうって、なにも友達じゃない。>

何か言いたそうだったけど加奈子はそれから何も言わない。

<そうだよね。>と私。

友達のはずなのに不安になる。本当は違う子と移動教室行きたいんじゃないか。

とか、私に振り回されていてあきられているのかもしれないと。


<とにかく音楽室行こっ!>

暗い廊下。雨が降っても電気がついていない廊下は先がよく見えない。

加奈子とは、たくさんしゃべった。

お母さんから私が記憶喪失だということも、すべて。

加奈子はそれを知ってどう思ったんだろう。

わたしだったら、つらい。友達との大切な思い出をすべて忘れられてしまうなんて。

けど、退院してから初めて学校に行ったとき。

いつも通りに接してくれた。にっこりとした顔で笑ってくれた。

ありがとう。の気持ちでいっぱいだった。。。