つーか、仕方ないだろ。

ぶっちゃけ、

「どーでもいい」

「もー、ほらー。いっつもそうだよねーリクはー。」

めんどくさい女みたいに愚痴り始めたアキ。


「そのくせさぁ、女子の人気だけは持ってくんだから、うぜぇなー」

一通り愚痴り終わったアキは、俺の方に目を向ける。


「で?それで何が分かったんだ?」

仕方ないから聞いてやる。

どうでもいいけど、一応知っておくことに悪いことはない。


それがねぇ、と悪戯っぽく、焦らすように笑われて少しムッとする。



「歓声からするに、なかなかの容姿の奴等らしいね。」

お前もやっぱり顔かよ。

ってか、

「性別は?」

ココ、一番重要だろ。

「男と女が一人ずつ。別々のクラスね」

人指し指と中指の間を広げ、パチリとウインクする。

それが似合ってしまう此奴な軽く殺意を抱く。

「男の方は優等生っぽい感じ。女の方はなんつーかな…冷静な感じ?」

冷静、ねぇ。

まぁ、ギャーギャー煩いよりは良いと思うけど。




「どうよー?リク君。見たくなっちゃった?」

「…」


いや、そりゃ見たいけど。

「なんか、噂が出回ってて皆がその転入生たちを見ようとしてるみたいだね」

まぁ、当たり前と言えば当たりまえだけど

「だからほとぼりが済んだら見に行こう」

「着いていってやるよ」

ニヤっと笑い楽しそうに微笑むアキ。

大方俺が興味もつって分かってて誘ったんだろ。

なんかムカつくな





苦しいよ



痛いよ



辛いよ





ねぇ何で笑うの


ねぇ助けてよ


ねぇ、“_____”








あれから一週間。

転入生たちの噂は広まり続けた

なんでも転入生同士は知り合いだとか。

こんな微妙な季節に同時に二人も転入してくるはずはないから大体予想はついていたけど。


二人で一緒に帰っていて、カップル?なんじゃないか、って噂もある。


この一週間俺は彼らに接触することなくいつも道理の日々をすごしていた







部活が無くて暇な放課後。

アキと帰るのがめんどくさくて、なんとなく図書室にいってみた


うちの学校の図書室は有名で様々な分野の専門書もある。


「しっつれー、しまーす」

辺りを見回しても人は居ないように見える

司書もいないって平気なのかよ…

挨拶した俺寂しい奴みたいだ。

なんて、考えながら俺は足を進める。

目的地は決まっている。

俺はよく奥の方の歴史書を読みあさっている

小さいときばあちゃんがよく昔の話をしてくれた影響からか、俺は歴史だけは好きだ。


まぁ、だから世界史は得意だ。


歴史書は図書室の中の奥の方にある。


背の高い本棚を避けながら進んで、堂々と並ぶ歴史書専用の本棚の前まで歩いた。

偏差値が特別高い訳ではないこの学校にはわざわざ図書室に来て歴史書を読む奴などないに等しい。

俺くらいじゃないのか?

事実、このコーナーで人に会ったことはない。

まぁこのコーナーが奥の奥にあるからかもしれないが。


凄く勿体ないと思う。

ここの図書室にはめずらしい本が沢山あるが歴史書なんて、本当に何処から手に入れたのか不思議なくらいのものある。



えーっと…


この前は確か五巻まで読んだっけ。

目当ての本を見つけ、備えつけの椅子に腰掛ける。

ポカポカと日当たりのいい場所で午後の読書には最適だ。春の日差しが窓から図書室に入ってきて、オレンジ色に照らされる。


30分くらい、ずっとそうしていた。

コツン、コツンと革靴が床を蹴る音がして図書室に誰かが入ってきた。

足音は、一旦止まりその後まっすぐ此方へ向かってくる。

え…なんか…

ここに向かってない?


何の迷いもなく進む音は俺のいる本棚の二つ前の本棚で止まった。




俺以外に歴史書、読むやついたんだ。

二つ前の本棚って云うと…隣の国に関する書物があるやつか。

俺がよく使う本棚は、世界全体の歴史を記したものだけど、前の本棚には各国ごとの歴史の本がある。


どんなやつなんだろう。


大抵の奴は知り合いのこの学校。
同じ趣味をもつ仲間、見てみたいな。
やっぱ、先輩とかなのかな。



本をそっと閉じて音を立てないように立ち上がる。

足音が鳴らないように慎重に進んで、棚から覗き込むように顔だけを出してみる。