嗚呼。


ゴメン、ごめん。


私が全部悪かった


自分のことばっかだったのがいけないの


でも、どうしようもなく好きだったのよ








「あ、アイリちゃん!?平気?」


クラッと視界が揺れて、慌てて机に手をつく


「ごめんなさい、ちょっと疲れてるみたいで。」



「ごめんね、私が変なこと言ったから…」


「違うのよ、元からだから」

気にしないで、と微笑み何かいいたそうなリエさんを見る





「他に何かある?」


気まずそうに目を反らした彼女は意を決したように


「エイル君と付き合ってるの…?」



ドクン、ドクン、ドクン



この間リクにも聞かれたこと。


エイルと私が付き合うなんて、そんなこと




__『  ちゃんとエイルくんっていつも一緒だよね~』


__『幼なじみなんでしょ?』

__『でもベタベタしすぎ!』

__『  だってエイルくんが好きなのにね』

__『見せつけてんじゃない?』

__『大人しそうに見えて性悪?』


親 友 の 好 き な 人 

な ん て あ り え な い










違う、違う

全部私が悪くて



「エイルとなんて付き合ってないよ」


付き合う資格なんて、ある訳ない


だって私は彼の大事なあの子をーーー




「エイルくんといつも一緒にいるからてっきり…ごめんね、変なこと」


ギチっときつく手を握りしめる


そう、いつもいつも私は狡い



「エイルは私のこと好きじゃないから」






ああ、まだこんなに胸が痛むのか


奥底に封印したんじゃなかったの?



ああ、何て滑稽で




小賢しく



最低なことか





「ごめん、待たせた」


校門で私を待つ柔らかい金髪をみつけて走り寄る


「気にすんな、転ぶなよ」


ぶっきらぼうだけど優しい


クスッと笑って隣に並ぶ


きっと学校の皆は見れない、彼の冷めた口調。
 
無口であんまり喋ってくれなくて表情の変化がない

もう、きっと誰も知ることはないんだろう



「転ばないって!そんなバカじゃないわよ!」


ぷくっと頬を膨らませてみせれば

「うるせぇよドジが」

コツンと、軽く頭をどつかれる



触れたれた場所がじんじん熱くて

火照っていく顔を隠す



「ど、ドジじゃないし!」




きっと、“この”私ももう。

彼の前にしか存在しない






「呼び出しか?」

「うん。女の子からね」

「…そうか」

「大したことじゃなかったから」


心配しないで、と口走ってハッとする。


何言ってるんだろう、私

「ごめん、心配なんてしてないよね」


バカみたいだ。

私はあの子とは違うから。

巧く生きていく術を知っているから



第一、エイルが私なんかの心配するはずない



「迎えが来るぞ。急ごう」

走り出した彼を慌てて追う

「ちょ、待ってよ!」









私たちにできた距離は、まるで


心を表しているかのよう。



どんどんどんどん、離れてく。


いつも触れないように気をつけて。


頭を触る、とかそういうことじゃなくて



本当は彼と肩を並べるのは私じゃないから


だから、私は彼と触れてはいけない



友達の枠を、越えるな








「…ハッ」


エイルが心配なんて、するわけないじゃないか。

だって、彼は。









誰より私を、恨んでいるのだから











図書室。




アイリと二人、歴史のコーナーで本を読んでいる

といっても距離はあるし、別々にだけど。



「なんか、アイリ今日変だよな」


心の中で呟いたつもりがどうやら口から出ていたみたいだ



慌てて彼女の反応をみる



ゆっくりとした仕草で瞳をあげ、そのまま何かを考えるようにまた瞳を下げる





「貴方に深く関わるなって、言われたから。」






なんだそれ。



「俺そんなこと一言も言ってないと思うけど」


「貴方から言われたわけじゃないわ」


「じゃあ、誰…」


言葉が続かなかったのは思い当たる人物が一人、みつかったから。



「あなただって、わかってるんでしょ?」




幼なじみ。