「はぁぁぁー」


マジでやっちまった。


何言ってんだよ、俺


まだそんなに仲も良くないのにあんなこと聞くなんて。

初めての想いで、どうやったらいいのか全然わかんねぇ



アイリの顔が、複雑そうで言葉を出すのさえ躊躇ってしまう雰囲気。


また一つ、彼女の顔が知れたけど、

でも、




「はぁぁー」


アイリはエイルがいいのか?





「あれれー、リク溜息なんてついて。恋いの悩みですかー?」


耳元から能天気なアキの声が聞こえて
休み時間の教室で一人でかんがえこんでいたことに気づいた




「…」

恋の悩み、なのか




「え、マジか。あのリクが女に…」





これは女子が泣くぞ、とどうでもいい事を呟きながら俺を見やるアキ。





コツン、と何かを落とす音がして

「……リエ?」


青白い顔でリエが立っていた。



「どーした」


落とした筆箱を拾い渡せば


「数学の教科書忘れちゃって借りようと思ったの!でも!全然平気!うん、他の子に借りる!」


何故か早口で弁解し始め

「じゃね!」


「あ、おい!」


脱兎の如く去っていった






「おい、なんだったんだよ」



意味わかんねーし。




「うわ、これはヤバいよ。マジヤバい」



修羅場になる、とぶつぶつ言うアキをあきれた目で見つめ、


またアイリについて考え始めた



だから、この時のリエのことなんてすぐ忘れてしまったんだ




コツリ、コツリ。


まだ新しいローファーを響かせ、放課後の静かな廊下を進む。

目指すは私の教室。

理由は簡単


「あ、アイリちゃん!」



この子、リエさん、だったかしら?

呼び出されたのよね


コソッと耳打ちされて、一瞬戸惑ったわ



「遅れてごめんなさい。それでお話って?」





「あ、あのね!いきなんだとか思うと思うし、多分アイリちゃんにはそんなつもりないんだろうけど…」


小麦色の肌が夕日当たって輝いている



ああ、いいな。


私だって本当はこんな色白じゃなくて外を走り回っていたかったのに


場違いなことを考えはじめる頭を深呼吸して冷やす


「リクと私幼なじみで、あ!リクって言うのはサッカー部の…」


リク…ああ、図書室の。


話しかけるなオーラを出してるのに関わってくる不思議なカレのことね。




「た、多分接点とかないんだと思うけど!最近ずっとリクがアイリちゃんのこと見てて!!」




段々わかってきた。


彼女のいいたいこと。




「私ずっとリクの側にいて、ずっと好きだったの…本人には言えないけど」



だって、そうでしょ。

彼女の顔を…

イヤ、こういう女の顔を

私はいやというほど見てきたじゃないか





「リクに近づかないでほしいの!」







_____『  に近づかないでよ!』






分かってる。

彼女の気持ちなんて痛いほど分かったよ



「ごめんね、アイリちゃんに言うなんてお門違いなんだけど、」


「どうしても、言いたくて」




こんな瞳をしていたのだろうか。


まっすぐな瞳、だっただろうか



ううん、違う


もっと濁ってて




モットキタナカッタ




嗚呼。


ゴメン、ごめん。


私が全部悪かった


自分のことばっかだったのがいけないの


でも、どうしようもなく好きだったのよ








「あ、アイリちゃん!?平気?」


クラッと視界が揺れて、慌てて机に手をつく


「ごめんなさい、ちょっと疲れてるみたいで。」



「ごめんね、私が変なこと言ったから…」


「違うのよ、元からだから」

気にしないで、と微笑み何かいいたそうなリエさんを見る