目を覚ましたら、私はいない。

目を覚ますと、男の人が悲しそうに笑っていた。


「初めまして、サナダ マコトです。」


そう言って、私の左手をそっと、壊れないように、握る。

あまりにも、悲しそうに、でもどこか嬉しそうに笑うから、じっとみることができず、
ゆっくり瞬きをして、周りを見渡す。


「ここは、病院だよ。」

サナダさんが、私の考えを見透かしたように言う。

確かに、壁やカーテン、ベッドも白で統一してあって、病院だった。

ここは、私のベッドしかなく、個室のようだった。


右の壁を見ると、コルクボードが置いてあって、そのコルクボードに、人の名前や走り書きのように書かれたメモ用紙が貼られていた。


「わたしは……何て名前ですか。」

「トダ、ミクだよ。」


そう言って、私の右手にある机の上にある、メモ用紙とボールペンを手にとって、何やら書き始めた。

そして、書いたメモ用紙を破って、私に見せてくる。

戸田 美空、と書いてある。


「これが、君の名前の漢字だよ。」

「関係、ないんですけど…男の人ってあまり字が上手いイメージがなくて、あ…偏見なんですけど。字が、上手いんですね…。」


ーーどうして、この男の人は悲しそうに笑うんだろう。


笑うって、嬉しいことがあって、笑うんじゃあないの?
悲しいときも、笑うの?