「春依ちゃん、ご飯、何が食べたい?」
私とは対照的に、優さんはいつもと変わらない。
いや。
きっと彼が相変わらずなのは、私への気遣いかもしれない。
「私は、何でもいいです……」
「えー、その意見が1番困るんだよ?どうせ食べに行くなら、パァーッとお酒でも飲みたいなぁ」
「私、未成年ですから、飲酒できない事をお忘れなく」
「ちょっとくらいなら飲酒しちゃっても……ね?」
「いやいやダメですよ。しかも今の発言、教師としてどうなんですか?」
いつもの調子で優さんと会話を交わして、私達の間を流れるのは、穏やかな空気。
とても居心地の良い空間。
だけど、その空気は一瞬にして崩れ去ってしまう。
「あっ、電話っ!」
話していると、家の電話が鳴った。
滅多にかかってこない家電。
ソファーから立ち上がって、子機を手に取った。
「も、もしもし……」
こんな時間に誰だろう?
セールスかな?
『もしもし、川瀬さんのお宅で間違いないでしょうか?』
「はい……間違いないですけど……」
『中央病院の者ですが……』
予想外の電話の相手に困惑した。
中央病院といえば、都内にある大きな病院だ。