「待って、春依ちゃん。もっと話したいんだけど……」
「っ……ごめんっ!」
腕を振り払って、琉璃香ちゃんを追いかけた。
「ねぇ、琉璃香ちゃん、待って!」
やっと追いついて、咄嗟に腕を掴むと、琉璃香ちゃんは無言で立ち止まって、私の方に振り返った。
そして、張り付けたような笑顔で、
「どうして、私を追いかけてきたの?春依ちゃんはもう少しあそこにいればよかったのに」
と、淡々とした口調で言った。
「でも……」
険悪な空気が漂う。
今まで琉璃香ちゃんと喧嘩した事も、こんな険悪な雰囲気になった事もなくて、どうしたらいいか、言葉が出ない。
黙る私に、琉璃香ちゃんは更に言葉を続けた。
「いいから戻りなよ。宇佐見くん、春依ちゃんと仲良くなりたいみたいだし。……私の事は気にしないでいいから」
それだけ言って、また私に背中を向けて歩いて行ってしまった。
この日、私達は休憩時間も放課後も会話を交わさなかった。
漂うぎこちない空気が、消えてくれなかった。