バス停を降りると古くからの家が立ち並ぶわき道を進んだ。




 確かに海の方向だったが、果たしてここが本当に海にたどり着けるのかというくらいの

 道なき道を進んだ。




 「本当にこの道でつくのぉ~。」




 少しぼやき気味に私は言ってみたが、そんな事はお構いなしで進んでいった。

 


 ようやく、木々の隙間から光が見えてきた。



 海だ




 そう叫びたい気持ちを抑えて、広がる海岸線に進んだ。

 


 ゆめとの後を追って、走り抜けた。

 
 少し感動をした。




 防波堤があり、テトラポットが波うち際に備えていた、誰も居ないプライベートビーチに

 なっていた。




 遠くの砂浜で、子供たちが波間で遊んでいる風景が和やかだった。

 
 当分じっと見つめたいたが、なんか感傷にひたってしまいそうだったので、

 砂浜に腰を下ろして、話を始めた。




 「ねぇ~ゆめとって、どんな漢字を書くのぉ~?」




 「えっ、んと、ゆめは夢で、とは何か変わっていて、人ではなくて斗なんだぁ
  だから”夢斗”って書くんだ。意味はわからんけど、あきこちゃんは?」




 「私は亜希子って書いて、自分もわからないんだよぉ ん~適当ぽいんだけどね」

 
 


 何気ない会話から、少し距離が近づいた感じがした。




 「なんて呼んだらいいの?」
 


 「そうだなぁ~みんなから、そのまんま”ゆめと”って呼ばれるけど、なんか
  特別な読み方がいいかもしれないなぁ。」



 「ん~なんだろう、”ゆめっと”とか、”ゆめゆめ”とか…」




 「なんだよーそれぇ~冗談はやめてくれよー。」




 「結構本気なんだけどね…」







 そんな他愛もない話をしつつ、真上に来ている太陽が妙に暑く感じた夏の午後だった。