少しドヤ顔で私を見てくる翠に、顔をしかめる振りをしながら笑った。
白い歯が覗いた横顔。
些細な言葉、表情、仕草、空気感。
その、ひとつひとつに、
愛しいが募ってく。
「………」
あたたかく、和やかで、幸せな今に、
思わず忘れそうになるけれど、
明日翠は、大学を受験する。
勉強しずらそうな耳〜!って、出そうになった軽口を飲み込んだ。
爆弾を踏むような言葉だと思ったから。
笑い合った後、自然に訪れた沈黙に、タイミングよく風が吹いて髪を揺らす。
サイドの髪を耳に掛けながら、神様がいるであろう神殿の方を見る。
「翠なら、大丈夫だよ」